発達障害・SST

発達障害児のこんなときどうする?「文字がうまく書けない」「字が雑・きたない」

発達障害児の、こんなときどうする?コーナーです。このコーナーでは、具体的なお悩みを元に、発達障害児の理解の仕方や、支援方法などをまとめていきます。

今回は、「文字がうまく書けない子ども」「ノートのマス目に大きさを合わせて書けない子ども」「字がきたない・雑な子ども」に対する支援方法についてです。発達障害がある子どもは、ノートのマス目から文字がはみ出していたり、とても乱雑な字だったりする場合があります。また、高学年になっても鏡文字を書いたり、ゆっくり丁寧に書いても、正しく漢字が書けない子どももいます。

このような発達障害児の、「文字がうまく書けない」「字がきたない・雑」問題にはどのように対応していけばいいでしょうか。

文字を書くために必要な機能

「文字を書く」という行為には、様々な機能が必要になります。そして、それらの機能に一つでも不具合があると、書くことへのつまずきになります。

  1. 書こうと思う文字を見たり、思い出したりして文字の形を明らかにし、
  2. 正しい筆順で書かなければなりません。
  3. 書くときは、決められた行やマス目におさまるように、線や点の配置、文字全体のバランスなどにも配慮し、
  4. たえず自分が書いた線や点を頭の中へフィードバックを行い、次に各線や点をどの位置に置けば良いのかを考え、
  5. 筆記用具を操作します。

このように記憶や動作など、様々な機能を駆使しなければ、正しくきれいな文字を書くことはできません。発達障害を持っている場合、その中のどこかの過程でつまずきがあり、文字を正しく、バランスよく書くことが困難となってしまうのです。

もちろんいつも綺麗な字で書かないといけないわけではありません。計算問題を解くときやメモを取るときなどは、ささっと自分が分かるレベルで書ければOKです。しかし、ゆっくり丁寧に書こうとしているのにうまく書けない、どうしても字が汚くなってしまう、注意して書いているはずなのに正しい文字が書けない。そんな場合は文字を書くために必要な機能がうまく働いていない場合があります。

文字を書くのが苦手なパターン

「文字がうまく書けない」といっても色々なパターンがあります。それぞれで対処方法も変わってくるので、どのパターンに当てはまるのかを確認しておきましょう。

①ひらがなやカタカナの細部が正しく書けない

②漢字が正確に書けない

③マスや行におさまるように書けない

④鉛筆の持ち方や動かし方がぎこちない

⑤極端に文字がきたない

文字を書くのが苦手な子どもへの対応

①ゆっくり丁寧に書かせる

ADHDの子どもたちは、文字のバランスや大きさを考えることもなく、ササッと衝動的に書いてしまい、間違えた文字を書いてしまうことが多いです。その書き方が癖になってしまい、「ゆっくり筆記用具を動かそうと思ってもコントロールできない」という状態になってしまっている子どももいます。できるだけゆっくり丁寧に書くように指導することが大切です。

ゆっくり丁寧に書く練習として「なぞり書き」もいいトレーニングになります。「視写」も良いですね。時間を決めて、お手本からはみ出さないように集中して取り組ませることがポイントです。鉛筆の操作や、集中するトレーニングにもなりますよ。

子どもによっては、できるびよりが出している魔法のザラザラ下敷きを使うと丁寧に文字が書けるようになる子もいました。下敷きがザラザラしているので鉛筆が滑りすぎることなく、とめ・はね・はらいの鉛筆操作がしやすいようです。

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②マス目の大きさやタイプを工夫する

マスに入る大きさの字が書けない子どもや、行をはみ出してしまう子どもには、やや大きめのマスや、広めの行のノートを使わせると、書きやすくなるケースがあります。

また、マス目や行があっても、それらを意識せずに書いている子どももいます。その場合は、声かけを続けることで次第にマス目や行のことを意識して文字を書くことができるようになってくるでしょう。また、マス目や行を意識させるために、マス目や行を色ペンなどでなぞって色付けをし、意識させるといった工夫もできます。

マス目の補助線が入ったものを用いると、文字のバランスが取りやすくなる子どももいますが、逆に、線が多くて分かりにくく書きにくさを訴える子どももいます。どのような大きさのどのタイプのマス目がいいかは、本人と話し合いながら決めると良いでしょう。

高学年になると、どんどんマス目の小さなものを使うようになりますが、その子どもに合ったノートを使うようにすることがとても大切です。

文字を楽しく書ける機会を増やそう

文字を書くことが苦手だと、様々な場面で書き直しをさせられたり、叱られたりしがちです。しかし、それだと書くことが苦痛になってしまいます。少しくらい間違えてもいいから楽しく文字を書ける機会を作ってあげましょう。

例えば遠くに住んでいる祖父母に手紙を送ったり、家族同士メモや伝言、交換日記を書き合ったりなどするといいですね。興味のある分野について書くのもオススメです。強要されることなく自由に書かせることが大切です。

漢字の宿題のときは側について、分からない漢字があればヒントをあげたり助言をしてあげることも漢字嫌いにさせない大切なポイントです。また、分からない漢字を自分でドリルや辞書で調べる方法も少しずつ教えてあげると、今後の学習に役立ちます。

文字を正しく丁寧に書く必要性を感じさせよう

ひらがなや漢字は書けるけど、字が雑すぎて、汚すぎて、読めない場合もあると思います。
「ゆっくり丁寧に書く」ことをアドバイスしても聞き入れない子どももいると思います。何度も注意を繰り返していると、「どうしてちゃんと書けるのに書かないの!?」そう思ってイライラしてしまいますよね。でも、それって子ども自身が文字を正しく丁寧に書く必要性を感じていないから行動が変わらないのです。

字を雑に書くことで起こるデメリットについて説明してあげましょう。

  • 「0」と「6」が紛らわしかったりすると計算はできているのに計算間違いになります。
  • 字が雑すぎて読めないと、他の人に伝えたい、読んでもらいたいと思ってもうまく伝わらないでしょう。
  • 雑に書くことで文字の間違いが増え訂正されます

そういったことを伝え、本人が「字は他の人が読めるように丁寧に書かなくてはいけないんだ」と感じられるようになるまで根気強く声かけすることが大切です。

反復練習をするだけではダメ!?

発達障害児の場合、文字がうまく書けないのは、脳の情報処理機能の未発達が原因とされており、本人のなまけや不真面目さから起こることではありません。ですから、文字がうまく書けないことを、本人の努力不足や能力不足だと決めつけないようにしましょう。

また、反復練習をさせれば正しい文字が書けるようになるという考え方は、発達障害児に対してはほぼ100%あてはまりません。間違いを減らすために練習量を増やすやり方は、本人の苦痛を増やし、文字を書くことへの嫌悪感を感じさせるだけで、期待する効果を得ることはないでしょう。

文字がうまく書けない」ことの根本的解決を測るためには、文字がうまく書けない子どものつまずきがどこにあるかを把握し、つまずきを補う指導を行い、子ども自身が練習を重ねなければなりません。

発達障害が原因で文字がうまく書けない場合、何度も繰り返し書かせたところで効果はあまりありません。それどころか、子どもの負担が増し、文字を書くことが嫌いになってしまう可能性もあります。

文字を書くことが苦手な発達障害を持った子どもが、できるだけ楽しく字の形や構造を理解させるための取り組みや具体的な工夫についてまとめます。

文字がうまく書けない子どもへの対策

1.ひらがなパズル

ひらがなを正しく書けない子どもは、文字の構造をきちんと理解していない場合があります。どのパーツがどのように組み合わされているかが分かれば、字の形を認識しやすくなります。

その練習として、「ひらがなパズル」などを作り、ゲーム感覚でひらがなの構造を意識することで、ひらがなの間違いが減ったり、バランスの良い文字が書けるようになります。

2.漢字当てクイズ

分からない漢字があったときには、それ自体をクイズにしてしまいましょう。

漢字が思い出せないときはヒントとして一画目を大人が書きます。それでも分からないときには二画目を書いたり、「のぎへんだよ」などのヒントを与えます。それを見て思い出して正しく漢字を書くことができたら「マル」をあげて褒めてあげましょう。

じーっと考えさせるよりも、テンポよく楽しく学習できるようにする方が得策です。

3.漢字の間違い探しクイズ

漢字の形や使い方を間違いやすい子どもには、「間違い探しクイズ」が効果的です。漢字の線や点を一つ多くしたり少なくしたりして文字を書き、どこが間違っているのかを考えさせます。

また、「専問(せんもん)」「先正(せんせい)」など、あえて間違えた漢字を使った熟語を見せて、使い方の間違いを気付かせます。そうすることで、正しい漢字の使い方を楽しく学ばせることができます。

4.点つなぎや漢字の足し算などのワークに取り組む

点つなぎや漢字の足し算などのワーク類はいくつか市販されています。それらを利用して鉛筆の動かし方や空間認知、漢字の部分部分の把握のトレーニングになります。子どもが楽しんで取り組める教材がGOOD!

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いかがでしたか?使えそうなものはあったでしょうか?

ぜひ参考に取り組んでみてくださいね!