「IQ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?テレビのクイズ番組などでこの言葉を聞いたことがある人が多いかもしれません。どんなイメージを持っていますか?IQが高いと、記憶力が良い、勉強ができる、計算が正確、頭が良い・・・いろんなイメージがあると思います。
発達障害を深く知るための心理検査・発達検査は色々とありますが、その中でもIQと呼ばれる知能指数が数値として出されます。詳しくはこちらを参考にしてください。
そもそもIQ(知能指数)って何?
IQとは、1905年フランスのビネーという心理学者が考えたものです。当時、知的障害などの判定をする際の客観的なデータで「知能」を示そうと考えていました。そこで、注意力や記憶力、語彙力などいくつかの検査を行い、それらをまとめて点数化したものを「知能」としました。そしてこの「知能」を数値化するためにできたのが知能検査です。これによりビネーは「知能検査の父」といわれています。
知能指数や発達指数は、年齢平均を100として、知的発達の状態が同年齢の中でどの位置にあるかを数値で示すものです。従って、100以上だと同年代の中で平均以上であるということです。
IQの数値をそれぞれ統計的に処理していくと山型のグラフが出来上がります。IQ100がもっとも平均値なので山の頂上となり人数も一番多いです。そこから左右になだらかに下っていきます。IQ70以下やIQ130以上の人は全体の2.2%、IQ60以下やIQ140以上の人は全体の0.1%となっています。
そして、このIQを基準に知的障害か否かが診断されます。主にIQ70以下の人から知的障害と呼ばれる部類に入り、IQ70〜80の人は知的ボーダーとも言われています。
IQというのは学力のようにどんどん伸びていくものではありません。ほぼその人の素質として持って産まれてきたものです。ですが、1回のテストでIQ90と出たとしても、その数値は絶対的なものでもありません。検査当日に緊張していたかもしれませんし、体調不良によっても数値は前後します。
IQは、知能を数値化したもの。しかし、絶対的な数値ではない。
IQは高ければ高いほど良いのか?
IQというのは、一つの基準です。いろいろな検査をして、総合的に数値に表しているものなので、全般的なIQは高いけれど、その中で得意なこと(よくできること)と、苦手なこと(なかなかうまくできないこと)の差がある人もいます。そして、このような発達のでこぼこがあることが、発達障害の特徴ともいわれています。
ですから、IQが高いからといって何でもできるわけではないのです。発達検査で大事なのは全般的な数値ではなく、もっと具体的な、どういうことが得意でどういうことが苦手なのかなどという今後にいかせる情報です。
そして、最も大切なことは、
知能の高さがその人の価値を決めているのではない
ということです。
バランスよくIQが高い場合は学力の結果はとてもよいかもしれません。しかし、だからといってその人が優れている人間だとは限りません。IQというものは、その人の一つの側面でしかないのです。
IQが高いけど社会性やコミュニケーション能力が低い方もたくさんいますし、実際に高い偏差値の学校の生徒の中には、高確率で自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)などの対人関係を苦手とする方であるという話もあります。
IQが高く、成績が良いと、学校では「賢い子」「勉強のできる子」とみられ、発達障害だと気付かれにくいです。そのまま成長し、働いて初めて生きにくさを感じる大人の発達障害の問題も最近はよく聞かれます。
IQをあげることもできる?
「IQは高ければ高いほど良いわけではない」ということを理解していたとしても、我が子の知的発達が遅れている、平均よりも低いということを知ると、多くの保護者はどうすればIQがあがるのかを考えます。また、本や通信教育で「IQが140まで上がる教育方法!」などとうたっているものもあります。
結論で言えば、IQ(知能指数)は学力のように上げていくものではありません。
もちろん発達検査の結果によって苦手な部分を見つけ、苦手なことを軽減するために子どもへの関わり方を工夫することは良いことです。検査から分かった傾向をふまえて意識的に環境を整えたり課題に取り組み、プラスの経験をした成功体験を重ねることによって能力が上がり、IQが上がることはあります。しかし、IQをあげるためだけに訓練をしても、それは全く意味がありません。
知能検査をする目的
知能検査をする目的として3つ挙げられます。
- 子どもの発達状況を深く知り、今後の教育の参考にするため
- 疾患や障害の有無を識別するヒントにするため
- 知的発達の遅れがあるか調べるため
知能検査をするのは、IQを知るためだけではないのです。
事前に知能検査の練習をしておくなどすると、数値が高くなってしまい、正しい結果を得ることができません。IQの数値をあげることが目的ではなく、その子どもが本来持っている力が十分に発揮され、日常生活で困らない場面が増えていくことが目的なのです。
IQ(知能指数)の見るべきポイント
IQとは、「全体の中でどの位置にあるか」を示すもので、頭の良さを示すものではありません。「知能」は「記憶する力」「読む力」「計算する力」「書く力」「推理する力」「判断する力」など様々な能力でできています。検査の結果を見るときは、IQだけの数値を見るのではなく、「記憶力は弱いけれど、推理する力は強いな」などの、その子の得意・不得意に注目することがポイントです。
知能検査は、IQ(知能指数)の数値を見るよりも、様々な能力のバランスを見ることが大切なのです。
大切なのは IQを知った後どうするか?
見出しに書いてしまいましたが、大切なのはこれです。
IQを知った後にどうするか。
何度も言いますが、IQとはその人の持つ能力の一側面を数値化したものです。
逆に言えば、他にも色々な側面が人間にはあるということです。
現在の小学校、中学校、高校などの学校教育では、「勉強ができる」「勉強ができない」ということが重視されています。受験も学力によって評価されますしね。
しかし、勉強ができるからといって幸せな人生が歩めるとは限りません。
- 勉強はできないけど、他の人よりも器用(細かいことをするのが好き)
- 勉強はできないけど、プレゼン能力が高い(話すのが好き)
- 勉強はできないけど、ダンスがうまい(ダンスが好き)
このように勉強以外で輝ける場所、楽しさを感じられる場所を見つけられたら、これからの社会とっても強いです。
むしろ、勉強ができるよりも、そういった飛び抜けた「好きなもの」「得意なもの」を持っている方が、良いのではないかと思います。
IQが低く、勉強がわからない。だから学校も嫌い。
そういった子どもを無理やり学校に連れていくことは、とても勿体無いことだと個人的には思います。学校は基本的に勉強させるところだからです。そういった子どもを受け入れられる学校はなかなか少ないです。学校もいっぱいいっぱいなのは、現場で働いていたので学校側の気持ちも痛いほど良くわかります。
学校に行かないと親が大変。
その通りです。ですが、そこで、そういった子どもと向き合うことで、その子どもの人生は大きく羽ばたくかもしれません。
最後に
今回はIQについてまとめました。
大切なのは、IQの数値ではなく、様々な能力のバランスを知り、それを知った上でどうするか。です。検査結果に一喜一憂するのではなく、どんな力が強く、どんな力が弱いのかを知り、支援の方法を考え、その子が生きやすいような環境を整えながら成長の場をつくっていけることを第一優先で考えて欲しいなと思います。